かわら板担当のレース参戦記(第6戦鈴鹿1000km) |
さて、第6戦鈴鹿1000kmについて書きます。このレースは普段のGTの3倍以上も走る長距離レースです。そして物凄く暑いわけです。真夏の鈴鹿ですからね。そこでティームJLOCは完全に整備された88、87号車を鈴鹿に持ち込む準備をしていました。
昨年までGTではなくポッカ1000kmとして独立開催されていたこのレースは、ティームJLOCにとって2度の表彰台を経験した縁起の良いレースです。今年からGTの1戦に組み込まれましたが、その第1戦で優勝したのもこの鈴鹿。だからティーム一同、特別な感覚をこの鈴鹿サーキットに持つのも無理はないのです。
ウエイトハンデは88号車が前回のポールポジションで10kg、87号車は0kgです。ポイントランキングはティームランキング6位(88号車)ドライバーランキングは88号車が7位、87号車が14位となっています。ここは長距離な分だけポイントも多めなので狙いどころであります。
今回は長距離なので88号車はアピチェッラ、桧井両選手に加え古谷直広選手が、87号車は山西、和田(今回よりWADA-Qより和田久に復帰)両選手に加え余郷敦選手がステアリングを握ることになりました。
私は今回はメカニックの杉さんと東京を出て途中静岡で給油担当を拾っていきます。ティーム本体も8月17日の木曜日に三重県・鈴鹿サーキットの26、27番ピットにムルシエラゴRG-1を持ち込みました。台風が九州を直撃しておりその余波で、どんよりした空模様ですが、週末には晴れるという予報です。晴れることは良いのですが、そうなると暑さが厳しくなり、ドライバーをよりつらい環境に追い込むことになるわけです。今回は特別にGT側で点滴ルームを設け、ドライバーはそこで点滴を受けることができるようになりました。これも鈴鹿1000kmの過酷さを証明するものですね。
宿泊はサーキットから20分ほどのホテル。この日の夕食は鈴鹿サーキットホテルの中のイタリアン。他のティームのドライバーなどもたくさんいますが、我々はオーナーの御好意で個室です。店側も大騒ぎをしてうるさい我々を個室に閉じ込めてしまえば、他のお客さんのためにもなるため喜んで応じてくれたのでしょう。
ビールで乾杯の後はワインをたくさんいただきます。何本も何本もワインが空になっていきます。まだ木曜日なのにこの騒ぎです。そしてその騒ぎはホテルに帰っても続くのです。
金曜日。ポッカ1000kmは6時間以上となる過酷な長距離レースです。そして午後6時過ぎにはナイトセッションとなり暗くなってからゴールを迎えることになります。したがって普段のGTではパッシングライト的にしか使わないヘッドライトも夜間走行に備え、より強力にします。ムルシエラゴRG-1もヘッドライトの下に補助ランプを追加するなどの対策がとられています。今年のル・マン24時間レースに出場した、ムルシエラゴRGT-LMと同じです。
この日の練習走行はいつものGTの午前午後各1回の他にヘッドライト点灯夜間走行の1時間が加わり計3回となります。午前9時45分からの1回目の走行は90分間ですが台風の影響で強い雨が降り、コースはウエットです。出て行くマシンはほとんどいません。雨が弱まったタイミングで約半数のマシンがピットアウト。ところがスピンするマシンの連続で赤旗中断も多く、セッティングできる状況ではありませんでした。ティームJLOCはそれでも87号車が数周走りましたが、2回目以降に走ることとしました。
2回目は14時15分からです。雨は昼過ぎに上がりドライタイヤでの走行となりました。始まってすぐ、赤旗が提示され走行中断。これは、今回の決勝から適用される新しい再スタート手順の練習で、ストレートに戻ってきた車両はイン側にGT500、アウト側にGT300が並んで停止しました。その後セーフティカーの先導でGT500の隊列の後にGT300が続いて1周し、再スタートが切られました。今後赤旗が出るとこのようにクラス別に整列して再スタートするのです。さて、このセッションは88、87号車共に順調にセッティングを進めました。
3回目は17時45分からですが5分ほど遅れて始まりました。路面は再びウェット。88、87号車共に雨の中でセッティングやライトの調整などを無事終了しました。
この日の夕食も鈴鹿サーキットホテルの中の和食です。ここでも当然ながら個室です。隔離された感覚ですが、気にせず騒ぎます。明日予選があるようにはとても思えません。乾杯はビールですが和食にあうのは焼酎の水割りです。まあ、ドライバーさんは皆さんはウーロン茶専門です。(古株の和田、古谷両選手は以前は豪快に飲んでいましたが、最近は他のドライバーの手前もあってか自粛していますので、少しだけ飲みました)
土曜日は予選日です。また車検やドライバーズブリーフィングなど朝から忙しい日です。その上今回はランボルギーニ・ジャパン主催のサーキットチャレンジが土曜日、日曜日と開催されます。
予選1回目は10時から開始です。天候は曇りで路面はドライ。風はやや強いけど、とにかく暑い暑い、非常に蒸し暑いです。開始時点での気温は29度、路面温度は31度でした。
アタッカーは88号車アピチェッラ選手、87号車は山西選手です。本来はじめの20分間のGT300占有でタイムを出さなければならないのですが、路面は昨日の雨でグリップがでないことがわかっています。むしろ路面にタイヤかすがのる最後の20分の混走時間帯の方が有利なのかもしれません。
ここでちょっとした事件が。占有時間帯ももうすぐ終わろうとしていた最終ラップ。アピチェッラ選手は素晴らしいラップタイムを刻んでいました。鈴鹿サーキットの計測はセクター1からセクター4まで4つに分かれており、この周アピチェッラ選手はセクター1から3まですべて自己ベストラップできていたのです。そのペースは2分8秒台を狙えベストテン入りは確実でした。そのとき前周にチェッカーを降られたと勘違いしたエンジニアがピットインするように無線で指示してしまったのです。2回チェッカーを受けるとペナルティーになることもあってアピチェッラ選手はエンジニアの指示に従いピットインしてしまったのです。あ〜もったいない!混走時間帯にはアタックドライバー以外のうちひとりが基準タイムをクリアしなければならないので再度のアタックはできませんでした。
結局88号車が12番手、87号車が17番手といういささか不本意な予選となった。この時点でスーパーラップには出られずクラス12番、17番グリッドが確定したのでした。
一方サーキットチャレンジの方は約30台のランボルギーニ車が集結し、最新のムルシエラゴLP640も2台持ち込まれ、桧井選手と古谷選手によるデモ走行が行われました。ドライバーズミーティング講師は古谷選手です。恒例のサーキットタクシーでは、古谷選手に加えアピチェラ選手、山西選手、桧井選手と4名の現役GTドライバーのドライブするムルシエラゴLP640とガヤルドの助手席に乗れるという、とても贅沢なものとなりました。
この日の晩ごはんも鈴鹿サーキットホテル内の中華です。もちろん一般客から隔離するために個室です。ここの中華は四川風なので非常に辛く、暑さでかいた汗が乾いた肌に新たに辛さの汗が浸透していく感じです。ビールで乾杯の後は老酒かなと思いきやここでも焼酎の登場です。ティームでは健康のために焼酎といっていますが、量の問題ですよね。
いつものように日曜日朝のフリー走行は9時から30分間です。上空の雲はしだいに切れ、ほとんど青空になりました。気温もぐんぐん上昇し午後の決勝が猛烈な暑さの中で行われることは確定!気温は29度、路面温度は31度。ティームJLOCも満タン状態でのセッティングを開始しました。
87号車のベストラップはクラス5番手の2分9秒737と予選タイムを大きく上回る結果に。88号車もベストラップこそ2分11秒107でしたが、ドライバー3名共がコンスタントに2分12秒台で走れる実力を見せつけました。
レーススタートは午後1時なのでランチを早めに済ませて、昼過ぎにはもうスターティンググリッドに並ぶ時間となります。何といっても6時間以上走るのですから。マシンも調子が良く事故に巻き込まれないよう注意しようとドライバー同士が話をしています。
ついにスタートの時間となりました。フォーメーションラップを終えてシグナルがグリーンに変わりスタートが切られました。88、87号車はスムーズにスタートし、6周目には88号車8番手、87号車14番手となりました。その後も11周目には88号車6番手、87号車12番手と、両車共にどんどんポジションアップを果たしています。しかし、このとき88号車は他車との接触でステアリングがセンターからずれてかなり運転し辛くなっていたのでした。
その後もいいペースで両車は走り、ドライバー交替直前の30周目で88号車は4位、87号車も9位とシングルポジションとなりました。87号車は山西選手から和田選手へ、88号車はアピチェッラ選手から桧井選手へ交代しました。交代した後も88号車はシングルポジションをキープ、87号車も13位とは落ちない好ポジションをキープしていました。
レース序盤はこのように推移し、好調なまま第3ドライバーへの交替時期が迫ってきました。予定より少し早く58周目でピットインした88号車は古谷選手に交替しましたが、降りた桧井選手は脱水症状で頭から水をかけられても自力で立つことさえ出来ない状態。へんに角度がついたステアリングの修正操作で体力を消耗したようです。しばらくたってから私が肩をかして点滴ルームに運び込みました。87号車の和田選手は元気で余郷選手と交替しました。
88号車はその後エンジンが全開になってしまうトラブルに見舞われ76周目にピットイン。これを修理してアピチェッラ選手がピットアウトしましたが、ピットロード出口で今度はクラッチトラブルでストップ。そのままリタイヤとなってしまいました。
87号車は余郷選手から山西選手に交代し10位前後を快調に走っていましたが、山西選手から和田選手に交代してすぐに駆動力を失い緊急ピットイン。点検するとミッショントラブルですぐには回復できず、ここでリタイヤとなってしまいました。87号車は120周を走り切っており、クラス17位完走というリザルトでした。
残念な結果に終わってしまいましたが、花火を見て、かたずけを終わり給油担当と杉さんを乗せて、鈴鹿市内で遅い夕食をとりました。静岡の給油担当の所に午前2時そして私の自宅についたのは午前3時半頃でした。